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13:house-mz~SAN-BASHI(桟橋のある家)

コンパクトかつゆとりのある関係 ~ 建物と敷地
MZさんは市中心部に近い場所に建設地を探していた。最初に問い合わせを頂いた際の土地は北面道路で、両サイドと南側は住宅が密集、近接していた。もちろん、一般的な平面計画では採光・通風条件が芳しくないため、インナーコート(室内光庭)を提示した。計画案は好評だったが、自家用車2台を駐車できるだけの間口ではなかったため、再考を要す事になった。その後、「ここはどうでしょう?」と問い合わせを頂いたのが今回の建設地である。「旗竿」とも「袋路」とも言える場所であった。ただ、南と東に中層マンションの駐車場があるため、先に問い合わせを受けた場所よりもはるかに快適な環境を生み出す事ができると確信し、計画を進めていった。想定規模は30坪強。決して大きなものを求めているわけではない。ただ、2台の車の回転軌跡を考慮した場合、敷地の約半分がオープンスペースとして必要となった。残る建物用の土地は10坪程度である。ゆえに、容積率や建蔽率といった法規制以前に、人・車 全ての動線を考慮した結果として「キューブな3階建と開放的な前面空地」の配置計画が選択されたのである。

「抜けのよい空間」
建物がコンパクトに計画されたため、敷地全体に余裕が生まれている。陽光も各部屋にくまなく廻りこむ。ただ、ここで留意すべきはプライヴァシーである。マンションやビルの建つ市街地は、道路レベル以外に「上空からの視線」もある。大きな窓を各面に設置すれば採光と通風は確保できる。だが、この事実とは裏腹に、誰かに見られているかもしれないという不安にかられる事にもなる。計画では、この「見られているかもしれない」という気持ちを和らげるため、窓はできるだけ小さめの窓とした。ただし、数多く配置した。たとえば、西面は各フロア縦2段の窓を3層にわたって配置しているが、これにより、採光と通風に必要な面積を確保しつつ、内部で動く人のシルエットは外からわかりにくくなっている。また、絶対に見られることのない窓=トップライト=は、「抜けのよい空間」を創る事の最大かつ最高の要素として、光と風を日々コントロールしている。加えて、駐車場背面に桟橋のように突き出た部分にはウッドデッキ(san-bashi)を敷きこむ事でリビングと一体化し、パーティー・スペースとして活用できる象徴的な場となっている。

開放すべき「場」のコントロール
基本的な生活の「核」は2階にある。1、3階の個室から集い、語らい、楽しむ場である。中心となるリビングエリアは、ウッドデッキ(san-bashi)、スタイリッシュなオープンキッチンに連携すると共に、吹抜に吊り下げられたダークグレーのキューブが見る事ができる。このキューブの正体・・・実は、書斎として設けられた2帖の小スペースである。コンパクトな中に「個」としての確保を求めたい・・・そんな希望を見事に具現化したものである。清潔なパウダー+バスルームも印象的である。このように、2階には家族でくつろぐ心理的に開放されたスペースが用意されている。外部との距離感を程よく保ちつつ心地よさを与えるこのフロアがあるからこそ、コンパクトな敷地の中にさらにコンパクトな住宅を建て、なおかつゆとりある外部環境を確保できたのだと言えよう。市街地における計画の成功例のひとつである。

作品名 house-mz
構造 木造
ジャンル 戸建住宅
予算帯 2,000万
建築の形体 新築
竣工年 2006年
所在地 静岡県
構造設計 久保田正一建築研究所
ロケーション 都市
施工者 久保田建設株式会社

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